不妊手術
infertility

猫の避妊・去勢手術について

猫の避妊・去勢手術とは、女の子の場合、両方の卵巣を、男の子の場合、両方の精巣を摘出する手術のことです。
避妊・去勢手術を行うことで中年以降におきる事が多い性ホルモンに関連した病気を予防することができ、統計的にも寿命が長くなると言われています。

避妊手術のメリット(女の子)

発情期に伴う行動の変化(特有の大きな鳴き声、精神的にナーバスになり攻撃的になる、尿スプレーなど)から解放されます。
メス猫の発情期間は数カ月続くこともあり、飼い主、飼い猫両方のストレスになることが多いようです。

縄張り意識が低下するため、室内猫として穏やかな生活を送りやすくなります。
多頭飼育の場合、同居猫に対してもより友好的になるといわています。

子宮卵巣疾患(子宮蓄膿症、子宮内膜炎、子宮・卵巣腫瘍)を完全に防ぐことができます。
2歳までに手術をすると、乳腺癌を高い確率で予防できます。
(猫の乳がんは非常に悪性度が高いため、予防することは大きなメリットとなります)

去勢手術のメリット(男の子)

尿スプレーといわれる自分の縄張りを主張するための排尿行動が予防できます。
また、すでに尿スプレーを始めている子でも、去勢手術を行うことにより90%の確率でスプレー行動を行わなくなります(しかし、多頭飼育の環境の場合、スプレー行動は治まりにくいようです)

縄張り意識をおさえ、室内猫として穏やかな生活をおくれるようになります。
多頭飼育の場合、同居猫に対してより友好的になるといわれています。
睾丸腫瘍、前立腺疾患の予防ができます。

オス猫の下部尿路疾患(FLUTD)と去勢手術の関係について

猫の下部尿路疾患(FLUTD)とは、若いオス猫に多く見られる病気です。
尿道内に細かい砂やタンパクの混合物が詰まることにより尿道閉塞となり、オシッコが出づらくなる、もしくは全く出なくなったり、頻尿、血尿といった症状を起こします。
以前は、成長段階の若い時期に去勢手術を行うことにより尿道の発育が悪くなり、尿道閉塞が起こりやすくなるのではないかといわれ、成猫になるまで去勢手術は行わないほうがよいだろうという意見がありました。
近年のさまざまな調査・研究で、若い時期に去勢手術をした猫のグループと、そうでない猫のグループとではこの病気の発生率に差がないことが明らかになりました。
若い時期に去勢手術を行うことで、手術後太りやすくなるという副作用が減る、尿スプレーの予防が高い確率でできる、麻酔のリスクを低く抑えられるなど、さまざまなメリットがあります。
よって当院では、生後半年前後の比較的若い時期での去勢手術をお勧めしています。

手術はいつから可能でしょうか?

・ 生後3ヶ月以上の健康な猫であれば、いつでも可能です。
発情中でも特に問題ありません。

不妊、去勢手術のデメリット

よく見られる副作用

◆肥満
避妊・去勢手術をすることで基礎代謝量が2割くらい減少します。
また、手術後に食欲が旺盛になることもあります。
肉食動物である猫の場合、食料を得るための狩りが一日の運動のほとんどを占めていますので、狩りをする必要のない、ペットのネコちゃんは運動によるカロリー消費量が少なく、さらに体重が増加しやすくなる傾向にあります。
多少太り気味程度なら許容範囲と考えてもよいとおもいますが、過度の肥満は糖尿病や、肝臓疾患、関節疾患などのリスクが上昇してしまいますので避けるべきです。
手術後は肥満を避けるため、今まで以上に食事の量、内容を管理する必要があります。
もし、手術前は子猫用フードを与えていたという子でしたら、手術後は成猫もしくは肥満猫用・体重管理用フードに変更してください。
一般的にはドライフードよりウェットフードと呼ばれる缶詰・パウチ入りのフードの方が栄養成分的に太りづらくできていますので、そのような食事を多めに与えることもおすすめできます。

ネコちゃんの避妊・去勢手術には今のところ、肥満以外にこれといったデメリットは知られていません。
避妊・去勢手術には肥満というデメリットを上回るメリットがあると考えますので、当院では基本的に不妊、去勢手術をお勧めしております。
飼い主様もこのような去勢・不妊手術におけるこのようなメリット、デメリットを理解したうえで自分の子に手術をさせるかどうか考えていただきたいと思います。

実際の手術について

◆手術前の検査
手術には全身麻酔を必要とします。
動物が安全に麻酔をかけられる状態かどうかを確認するため、手術の前に一般的な身体検査、血液検査を行います。

◆血液検査の内容について
・2歳以下で身体検査上特に問題のない犬、ねこ
赤血球・白血球数・血小板の検査、血液化学検査7項目(血中タンパクの数値、肝酵素、腎機能)を行います。
・3歳以上の犬、ねこ
赤血球・白血球・血小板の検査、血液化学検査17項目 電解質の検査を行います。
また動物の状態より必要であると思われた場合、飼い主様と相談の上、レントゲン・超音波エコー検査などの追加検査と行わせていただく場合もあります。

手術室

当院の手術室です。
麻酔器・手術機器・麻酔モニタリング装置・保温器具・レントゲン装置・オートクレーブ・EOGガス滅菌器などがあります。

◆手術方法
・女の子の避妊手術では両方の卵巣のみを摘出します
・男の子の去勢手術では両方の睾丸を摘出します

女の子の避妊手術について

はじめに鎮静剤・鎮痛剤を皮下注射します。
しばらくして眠ったところで追加の麻酔薬を注射します。
気管チューブを挿管し、気道の確保をします。
手術中はこのチューブを介して酸素を投与します。

手術部位の毛刈りと1度目の消毒を行います。
おへそから骨盤の間の中央1cmくらいが皮膚の切開予定部位です。
(赤いラインの部分)

麻酔中は心電図、心拍数、酸素飽和度、血圧、体温、呼吸数、呼吸波、換気量、呼気中二酸化炭素濃度などをモニターし安全な麻酔維持を心掛けています。

手術室に移動し、2回目の消毒をします。

手術中
手術に用いるマスク、キャップ、グローブ、ガウン、ドレープは全て一回使用のみのディスポーザブル製品を使用し、無菌的な手術環境を心がけています。

卵巣の摘出には血管シーリング装置(リガシュア)を使用します。
これにより縫合糸を使用せず、すばやく確実な止血をすることが出来ます。
手術時間も短縮できますので、動物への負担も軽減されます。
腹壁の縫合は吸収性縫合糸を使用します。

摘出した卵巣。

手術が終了したところです。
皮膚の縫合は吸収性縫合糸を皮膚内に埋没させますので、抜糸の必要がありません。
術後数日で結合組織が盛り上がり、しこりを感じることがよくありますが、傷口が治癒する過程なので問題ありません。
しばらくするとしこりは引いていきます。

男の子の去勢手術について

途中までの流れは女の子の避妊手術と同様です。
手術室にて毛刈り、手術部位の消毒を行います。
写真の赤いラインが皮膚の切開予定部位です。

ドレープをかけ、手術を行います。

手術後の状態です。
切開した皮膚の縫合は行いませんがすぐに治癒します。
たるんだ陰嚢の皮膚は、しばらくすると萎縮して平坦になります。

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